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刺青切除法

切除法とは、刺青部分の皮膚を切り取り、周囲の皮膚を縫い合わせる治療法です。当院では、ジグザグ切除法を用いるため、一般的な方法と比べて切り取る皮膚の量が大幅に少なく、傷跡を最小限に抑えることが可能です。また、ケロイドやひきつれ等の術後の様々な症状を防ぐことができます。切除法は比較的小さな刺青に適しています。刺青の大きさ・張力の強さなどから切除可能と判断したものに絞ってこの方法で施術します。

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▼ 施術のながれ

1 麻酔 局所麻酔で行います。
2 切除 刺青の形を利用して、ダブルプラスティ法でジグザグに切除します。
3 止血・洗浄 腫れ・内出血は最小限におさえます。
4 皮膚縫合・微調整 真皮も表皮も丁寧に縫合します。
5 抜糸 6〜21日後 ※シャワー・入浴 当日より可能
時間 2〜8時間(大きさによる)
シャワー・入浴 当日より可能
腫れ ごくわずか(個人差あり)
ダウンタイム 小さなもの→ほとんどない。
大きなもの→長期安静が無難。
オペ日以外の通院 抜糸(6〜21日)、希望。

ジグザグ切除法とは

ジグザグ切除法とは、切開線を直線にせず、わざとジグザグに切除する方法です。ジグザグに切除した箇所は、バネやアコーディオンのような緩衝作用があり、張力を分散・吸収します。そのため、ケロイドやひきつれを起こしにくくなります。また、グラデーション効果(ぼかし効果)があるため、傷跡が大変目立ちにくいのも特徴です。

一般的なクリニックでは、刺青を直線に切除する「紡錘形切除」を行いますが、その方法ではケロイドやひきつれが生じやすく、傷跡が目立ってしまいます。しかし、「ジグザグ切除法」を用いれば、傷跡を最小限に抑えることが可能です。

切除する皮膚は刺青部分のみ

一般的に行われている紡錘形切除では、刺青が入っていない皮膚まで幅広く切除しますが、当院では極力刺青の部分だけを丁寧に切り取ります。これによって切除する皮膚を3分の1程度にまで抑えることが可能となりました。皮膚を多く切り取れば切り取るほど、ケロイドの最大の要因である張力が増してしまいます。そのため、当院では、色の付いていない正常な皮膚はできるだけ切り取りません。

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Dr.境のコメント
わたくしの手術では、皮膚を直線に切らず、刺青の形そのままにジグザグに丁寧に切り取ります。本当に刺青の形ギリギリです。正常な色の付いていない皮膚を切り取って捨ててしまうと、その分、ケロイドの最大の要因である“張力”が増してしまいます。そのため、出来るだけ正常な皮膚は切り取りません。ケロイドは見栄えだけでなく、痛み、痒み、ツッパリ感もあり、日常生活に支障をきたします。

ジグザグ切除をする際、最初に凹凸をデザインしてから手術を始めるという意見もありますが、刺青は不規則な形をしていますし、部位によっては張力が異なり歪むため、私の場合は、最初に凹凸を決めずに状況に合わせて切除していきます。

剥離はほとんどしません。剥離した部分は固くなるかもしれませんし、剥離した部分の大きさに比例して合併症を起こす可能性が高まるからです。

また、縫合時は、最初からどことどこを合わせて縫うなどとは考えず、一番無理のない位置を見極めて、縫い合わせていきます。凸に相対する面に凹がない場合には、割を入れて凹を作成しうまく仕上げます。当院では形成外科や美容外科で顔用として使用する極細の糸で非常に細かく縫合しています。

ジグザグの傷跡は、バネやアコーディオンのようなクッション作用で張力を吸収します。また、グラデーション効果(ぼやかし効果)があり、直線の傷跡よりもきれいに仕上がります。

小さな刺青であっても余分には切り取りません。小さめの刺青の場合は問題がないことが多いのですが、やはり、どれだけ切り取るとケロイドになるのか、後遺症が生じるのか、はっきりしませんので、出来るだけ色の付いていない皮膚は温存することが求められます。ましてや、大きな刺青に対しては「切除」自体が良い方法とはいえないでしょう。


一般的な紡錘形切除との違い

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専門家も含め、多くの医師が「皮膚は紡錘型に切って、両端を縫いあわせれば“一本線の傷”になる」と信じています。
そのため、一般的なクリニックでは紡錘形切除が行われています。

しかし、少なくとも形成外科的な観点から言いますと、直線の傷がきれいになるのは、筋肉に垂直、しわに平行、張力(傷が引っ張られる力)も強くない、等の条件がそろった時だけです。

普通、皮膚を幅広く切り取り、両端を寄せて縫い合わせた箇所は、手術直後はあたかも“一本線の傷跡”になったかのように見えますが、張力が一方向に集中するため、日が経つごとに幅が広がって盛り上がり、ケロイドのような非常に醜い状態になります。また、ツッパリ感、痒み、痛みも酷く、日常生活に支障をきたします。

紡錘形切除の傷跡
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ジグザク切除法の傷跡
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Dr.境のコメント
広く、一般の方の傷跡に対する認識は、「細い一本線」というのがほとんでしょう。しかし、われわれが普段良く目にする傷跡は、怪我や手術で切って縫ったもの、小さな皮膚腫瘍を切り取って縫ったものです。刺青を切除したときのような「皮膚を幅広く切り取った」場合の傷跡は、全体の1%にも満たないでしょうから、なかなかお目にかかることができません。ですから、「傷=細い一本線になる」と勘違いされがちです。

皮膚を紡錘型に幅広く切り取り、両端を引き寄せて縫合した場合、手術直後はあたかも一本線のような傷になりますが、次第に張力によって傷の幅が広がり、盛り上がってきます。中縫い、下縫いをきっちり行うとこのようになりにくいという意見もありますが、その場合、傷の幅が狭くはなりますが、痛みや違和感は強くなります。

また、ドッグイヤーにも注意が必要です。一般にはあまり知られていませんが、形成外科の世界でだけは常識的な話です。縦横比の小さな紡錘型切除縫合では、ドッグイヤー(犬の耳)と呼ばれる角状の余剰皮膚組織が生じます。縦横比が大きくなるほど、この角状のものはなだらかになり、縦横比3~4程度で目立ちにくくなります。縦横比のあまりない刺青を切除するとビックリするほどの非常に長い傷跡になるということです。すなはち、紡錘型切除や分割切除では、患者様が思っている傷跡よりもはるかに長い傷跡が残るということです。

当院では、ジグザグ切除などで余剰皮膚組織を散らしたり、8字縫合法で皮膚組織を縦横同時に縮めたり、削皮・植皮・皮弁など、他の手術方法を用いたりして工夫を凝らしています。

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ウェーブ状切除直線仕上げとは

形状、部位、方向(筋肉に垂直・しわに平行)が直線に有利な刺青であったとしても、当院では、あえて直線には切りとりません。直線の長い傷跡は、拘縮を起こしやすく、傷跡が盛り上がり、目立つ傾向にあります。また、つっぱり感や違和感が強く生じたり、傷跡の末梢にしびれが生じたりします。

そのため、当院では、直線に有利な刺青の場合であっても、直線に切除せず、ウエーブ状に切り、丁寧に上手く縫合することで、直線の傷跡に見えるように仕上げています。この「ウェーブ状切除直線仕上げ」を用いることで、皮膚の切除量を大幅に減らせることが可能です。さらに、ウェーブ状の傷跡には、バネのような緩衝作用があるため、拘縮やさまざまな症状を緩和することが可能です。

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小さな刺青でも注意が必要です

小さな刺青でも部位によっては大きなリスクがあります。例えば、手足(四肢)は最大の難関です。手首や腕には手に通じる大切な神経、血管、スジ全てが通っていますし、手の甲には薄い皮膚のすぐ下に指を伸ばすための大切なスジが通っています。

また、手で一番手術が大変な部位は、実は、指です。細い指に入れられたほんの小さな刺青が実は最難関だったりするのです。

足(太ももや膝から下も含む)も非常に難易度の高い手術を要します。日常生活で動かしてしまう部位ですし、足首は余剰組織が少ない関節部であり、その上、常に体重がかかり日常生活においてうっ血する部位です。また、下腿には足に行く大切な神経と血管が通っています。

このように、小さめの刺青でも部位によっては大きなリスクがあります。

また、女性の方にご注意いただきたいのは、胸の刺青です。胸に大きな切除を行えば90%がケロイドに、また、たとえ小さな刺青の切除であっても、最大限の注意をはらわなければ乳首の位置が左右アンバランス・乳房はいびつな形になります。当院では、胸の刺青は、小さなもの以外切除自体が不向きであり、削皮が適応であると考えています。

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Dr.境のコメント
当院の場合、大きな刺青の患者様が多いのですが、どんな小さな刺青でも丁寧に治療しています。部位によっては大きなリスクがあるからです。例えば、手首や腕には、手に通じる大切な神経、血管、スジ全てが通っています。また、手の甲には薄い皮膚のすぐ下に指を伸ばすための大切なスジが通っています。私は10年以上、手の外科手術も行ってきましたので、手や手首・腕の難しさは身に染みています。また、手の手術で一番大変な部位は、実は、指です。細い指に入れられたほんの小さな刺青治療が実は最難関だったりするのです。小さな刺青でも余分には切り取りません。どれだけ切り取るとケロイドになるのか、後遺症が生じるのか、はっきりした境界がないので、切り取ることの責任は重大です。

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Dr.境のコラム「分割切除の正体」

分割切除という矛盾した手術がはびこっています。
これは、「一回目と二回目の手術の間に皮膚が伸びます。伸びたら次の部分を切除しましょう」という、大きな刺青を何回かに分けて切除する手術法です。

冷静に考えると、初回手術が一番瘢痕(傷跡)が少なくやわらかいため、一番縫い寄せやすいのは間違いありません。わたくしは1回で取れないものは10回でも取れないと思います。これまでに組織拡張器・ティッシュエキスパンダー(皮膚を時間をかけて伸ばして行く機械)などを使用した経験がありますが、その経験を踏まえて言いますと、皮膚はほんの少ししか伸びません。何度に分けても同じです。

なぜこのような不思議な間違いがはびこるのかというと、答えは簡単です。瘢痕(傷跡)を全部取れる外科医が少なすぎるからです。医療・医学というものは帰納法中心に考える学問です。経験の蓄積による積み上げ式の学問ですので。傷跡を全部取れない外科医が多ければ、どのようなことが起こるのかというと、例えば、分割切除の2回目で刺青の残りを切り取った場合に、傷跡を取りきれないと傷口が広がりませんので、あたかも皮膚が伸びて感じます。ところが、傷跡を完全に取り除ける外科医が手術を行うと、恐ろしいほど傷口が開きます。ですから、皮膚は伸びていないということになります。

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このように間違った経験に基づいて、一般常識となっているものがたくさんあります。医者の世界も他の世界と同じように、多数決がものをいう世界ですので、傷跡を取りきれない大勢の医師が分割切除を行っていると、皮膚は伸びるという間違った考えが常識のようになってしまいます。どこかの本に書いてあった「常識はただの先入観」という話が本当になってしまうのです。

わたくしの経験上、皮膚はほとんど伸びません。もしかしたら全く伸びず、あたかも伸びているように感じられる部分は、もともとあった皮膚の余裕を使い切っているだけなのかもしれません。また、痛みや引きつれ感、ツッパリ感、違和感などに対する慣れや、初期の腫れ、傷跡の硬さが改善されたことをあたかも皮膚が伸びていると錯覚しているだけなのかもしれません。やはり、あらゆる可能性を考慮した上で、結論を出さなければならないと思います。

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